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コラム

【マーケティングせつないとき】季節に動じない強さをみたとき(2005.08.10)

暦の上では立秋が過ぎたが、まだまだ真夏の暑さ。しかし、商戦では夏のセールも終盤を迎え、売場は順次秋物商品へと入れ替わっている。
百貨店業界は、6月の全国売上高が前年同月比1.4%増となり、7月も好調を維持したらしい。クールビズ関連の紳士衣料に加え、浴衣など婦人衣料も概ね好調とのこと。
一方、お中元商戦は、結婚式に仲人なし、商関係における贈答品の禁止などライフスタイルの変化で市場規模が縮小し、包装紙の神通力も消えた中、産直やコンビニの参入などで競争はさらに激化した。
いずれにしてもヒートアップする夏商戦だが、夏の主役となる商品・サービスは、「冷やし系」と「燃やし系」に分かれる。
「冷やし系」は、「暑いから涼しくしましょうよ。冷たいものをとりましょうよ。」という暑さからの逃避、換言すると「守り」と言える。例えば、家電業界ではエアコン。今年は掃除不要など高機能エアコンが目玉で、全体でほぼ前年並みの数字、約680万台をクリアする見込みとのこと。それに対して、同じく冷やし系の代表、ビールや緑茶等の飲料業界は、昨年の「猛暑特需」との反動で苦戦しているようだ。しかし、サッポロ「ドラフトワン」で需要に火がついた「第三のビール」は伸びており、各社シェア争奪戦に必死だ。これら以外にも、冷やし系には避暑地への旅行や、クールビズ関連商品、等もそうだろうし、商品としては、風鈴などもそうだ。また、新潮文庫の100冊。集英社のナツイチ等の読書キャンペーンも、涼をとりながら書にあたるというメッセージが読み取れ、冷やし系に入れたい。
もう一つの「燃やし系」は、「暑さなんてなんのその。燃えていこうぜ。」というもの。冷やし系に対して「攻め」と言える。
熱闘甲子園、夏祭り、夏フェス、花火大会等々のイベント。食べ物だとカレー、韓国料理等スパイス系はこれにあたるだろう。暑さと紫外線を恐れない海水浴なんかもこちらに入れたい。
「冷やし系」「燃やし系」どちらがいいか悪いかではなく、その製品やサービス独自のアイデンティティがあるわけなので、いずれかの路線をメッセージとしてもはっきり打ち出して勝負することになる。
その場合、アイデンティティに逆らってしまうと今ひとつとなりやすいので注意が必要だ。例えば、ラーメン屋。どちらかといえば燃やし系なのに、だいたい冷やし系の冷麺を用意する。しかし、観察してみると、流行っているラーメン屋であればあるほど、冷やし系メニューには力を入れておらず、またラインナップには加えても、実際は冷麺を頼む客はあまりいないことがわかる。やはり中途半端はよくない。
世の中には、数え切れない商品やサービスがあるわけだが、やはり夏商戦は、冷やし系か燃やし系かのいずれかでないと盛り上がらない。
───と思いきや、そんな常識は通用しない例もある。
以前に紹介した神田のおでん屋。常連客の名だけでなく注文まで細かく覚えてしまうというあの店だ。おでんは、熱いものだがカレーなどとは違って、夏の燃やし系ではない。季節はずれの冬の「ほかほか系」だ。先日暑い最中の昼に、夏はどうなのかなと寄ってみると、正午前なのに冬と全く同じ満席状態。メニューも冬と同じおでん。女将さんの出で立ちも和服と割ぽう着と同じ。違っているのは、客のおじさんたちの服装にクールビズが混じっていることくらいだ。
これには恐れ入った。確か轡田隆史氏のエッセイだったか、銀座のおでん屋の女将が、「夏はどうするんですか?」という客の質問に対して、「夏もおでんですよ。うちは、おでん屋ですから」と答えたというエピソードが紹介されているがまさにそのまんまだ。
一般論としては夏向きでない商品でも、よほどの自信か、はたまた愚直かの一点突破で堂々勝利。攻めでも守りでもない「動じない系」だ。
夏商戦大事なラストスパート。さて「攻める」、「守る」、「動じない」のどれで戦おうか。(鈴木一)

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】95号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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