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コラム

【マーケティングせつないとき】理解しがたい市場拡大の現場を見たとき(2005.06.15)

万世橋を越えるとそこは○国だった・・・。
つくばエクスプレスの開通を8月に控え、大型オフィスビルのクロスフィールドをはじめ大規模な開発で様々な分野から注目されている秋葉原。世界一の電気街が、今や「オタクの聖地アキバ」に変貌したという話は、既にメディアでも広く紹介されている。
仕事柄もあり、街をうろうろするのは好きだし気にはなっていたが、最近のアキバには言いようのない生理的バリアがあり、しばらく近づかなかった。
しかし先日用事があったこともあり、この機会にと久々に歩いてみた。噂に聞いていた秋葉原駅前のラジオ会館。ビルは古くからあり以前から知っていた。外観は特に変わったことはない。恐る恐る2階に上がってみると、フィギュア、食玩、中古のアニメコミックスなどの店舗、そして通路にはガチャポンがずらっと並んでいる。各店には特定のテイストの学生や大人が結構入っていて、ウィンドウをじっと眺めて品定めをしている。
私はこのとき二つの恐怖感に襲われていた。一つは、何か想定外の気持ち悪いものや人に遭遇するのではないかという恐怖。そして、もう一つはこういう店の前にいるところを知人に見られ、私自身がそういう趣味があると思われてしまうことへの恐怖。
長居は無用と店を出て、そこから末広町あたりまでを裏通りも含めてぐるっとまわってみる。さすがに立ち並ぶ少女アニメのショップに入る勇気はなかったが、とりあえずキョロキョロと外から視察。アニメやゲームのキャラクターにふん装した若い女性が、接客対応してくれるという噂の「コスプレ居酒屋」がビルの上階に見えた。オタク層にとって夢のテーマレストランで毎晩早い時間帯から満席だという。
また、ウエイトレスがメイドに扮する「メイド喫茶」も見つけた。風俗ではなく、触ったり覗いたり厳禁のフツーのカフェだそう。しかし来店時のあいさつは、「いらっしゃいませ」ではなく「お帰りなさい。ご主人様」、帰りに送り出してくれるときは「ありがとうございます」ではなく「ご主人様、いってらっしゃいませ」とのこと。───怖い。メイド喫茶では、恋愛弱者の男性が、思い通りにならない現実の恋愛と違い、ご主人様としてメイドさんとの擬似恋愛が体験できるので夢中になってしまうという。───キモい。
昨年の野村総合研究所(NRI)のよると、アニメ、アイドル、コミック、ゲーム、自作PCの「オタク主要5分野」を合計した国内の「オタク」層の市場規模は約2900億円に上り、市場に対する影響力と消費規模はもはやニッチとは言えなくなっているとのこと。
また、オタク層の中でも、特にアニメの登場人物のキャラクターをめでる人たちを「萌え層」などと呼ぶが、一説によると「萌え市場」は、上記NRIの推計を大きく超えていて既に「兆円」の単位になっているとも言われている。
「萌え層」は、現実から逃避し、漫画やアニメの中で理想通りの魅力をもったキャラクターを想像して楽しむ大人しくて社会に従順な人たちだという説明がある。別段「アキバ系」や「萌え」が犯罪の温床であると言うつもりはないが、最近特に目立つ少女監禁事件等が、全くこの世界に無関係であるとは正直思えない。こういうところに出入りしている中から、現実と虚構の区別がつかなくなる輩が出現してしまうことは想像に難くない。
創生期の新市場には、必ずしも一般に受け入れられないものもある。そして、ニッチ市場も拡大していけば、当たり前のものとなり市民権を得る。アニメは日本の強みであるし、コンテンツビジネスは今後の重要な産業基盤の一つとなるであろう。
しかし、このまま「萌え市場」が拡大し、アキバがそのメッカとして世界におけるポジションを確固たるものにしていこうという路線でいくとすれば、この国はどうなってしまうのか?
私自身かなり偏見があると思うし、善良なオタクの方々にお叱りを受けるかもしれないが、ビジネスとは別の次元でどうしても素直に拍手を送れない。(鈴木一)

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】87号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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