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コラム

【マーケティングせつないとき】CMが動物奇想天外状態に向かうとき(2005.06.01)

二本足で直立し、一躍人気者になった千葉市動物公園のレッサーパンダ「風太」君に、CM出演依頼や写真集の出版申込が相次いでいるらしい。
風太君人気のおかげで同公園には、家族連れなどが連日詰めかけ、入園者は大幅アップ。千葉市は立ち姿の肖像と「風太」の名称を合わせて商標登録するとのことで、まもなくタレントとしてデビューしそうな勢いだ。
ペットブームの中、アイフルのチワワ「くぅーちゃん」が引き金となり、空前のペットタレントブームが到来した。出演料が人間様より格段に安い、スキャンダルのリスクも少ないという提供者側のメリットも相まって、ペットモデルのプロダクションがたくさん生まれ、そこには自らの自慢のペットをCMやドラマに出演させようとする飼い主が集まる。ウェブで会員登録を受け付け、オーディション情報をメールで配信。オーディション参加申込もウェブで受け付けるなど、まさに人材登録や雑誌の読者モデル応募さながらだ。犬や猫はもとより、ヘビやイグアナなど爬虫類や猛獣までが登録されているらしい。
私自身ペットを飼っていないので「飼い主の気持ちがわからない」と罵られそうだが、どうも必要以上にペットを自慢したり、犬に服を着せたりしているのを見ると、人間のエゴを感じてしまい興ざめしてしまう。
風太君もきっとCM出演など嫌がっているに違いない。
思い起こせば1984年に大ブームとなったエリマキトカゲ。えり巻きを広げて後ろ足だけで立ち上がって走るユーモラスな映像は多くの人の印象に残っているはずだ。
ところがエリマキトカゲが、えり巻きを広げるのは「命がけ」の時だけだそうで、多くのエリマキトカゲは、広げたえり巻きの重心を支えきれず、首の骨を折り死んでしまう。撮影の際には、ガラガラヘビを近づけてエリマキトカゲを走らたそうだが、彼も例外ではなく、撮影後まもなく命を絶ったとのこと。────悲し過ぎる。
ところで、このエリマキトカゲは何のCMだったか覚えているであろうか?正解は三菱自動車のミラージュ。こちらは覚えていない人が大半であろう。実際にこのときのミラージュは期待ほど売れなかったらしい。このCMがウケた中心層は子どもたちだったからだ。
広告には、「何を伝えるのか」という表現(クリエイティブ)戦略と、「どのように伝えるのか」という媒体(メディア)戦略があるが、どちらもターゲットや市場のポジショニングがあった上で決まることは言うまでもない。いくらCM自体が作品として注目を集めても、商品売上の拡大など広告目標を達成しないとすれば、それは広告代理店を潤わせているだけだ。まあ売上ではなく認知の拡大という目標もあるのだろうが、それにしても動物だけを覚えていて何のCMか記憶されていないようであれば話にならない。
昨年のタマちゃんもそうだが、殺伐とした世の中、一点の曇りもない動物の愛らしい表情やユーモラスなしぐさにはほっと癒されることは確かだ。しかし、動物を出せば好感度が上がるというだけでCMに引っ張ってくるのはあまりにも安直で感心できない。
視聴者参加番組がやたらに増えてテレビ番組の質が明らかに低下したように、動物の人気を借りたCMの乱発は、広告のレベルを転落に向かわせるに違いない。
レッサーパンダは「ワシントン条約」で商取引が禁止されていて、学術目的の飼育・繁殖以外には利用できないなどCM出演には課題があるらしい。キャラクターグッズくらいならいいだろうが、ここはひとつ、嫌がる風太君本人のためにも、広告の将来のためにも、CM出演は見合わせてもらうことはできないものだろうか。(鈴木一)

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】85号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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