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コラム

【マーケティングせつないとき】一番大切なことが軽視されているお化け企業をみたとき(2005.05.11)

107人が死亡したJR宝塚線の脱線事故は、人災ならぬ「法人災」と言っても過言ではない。
置き石説をにおわす意図からか最初に粉砕痕を発表する一方で、オーバーランの距離に関する発表が二転三転したあたりから不信感を抱かざるを得なかった。
そして、次々に明らかになる事実。
事故電車に乗り合わせた運転士が救助活動をせずに立ち去り勤務先に戻っていた問題は、気が動転したというが、人間として信じがたい。古い役所的大企業の体質が「判断しない個人」をつくったのか。また、ボウリング、ゴルフ、宴会等々一連の不適切な行動は、「自分の担当範囲以外のことは他人事」とという縦割りの体質の表れだ。
一方、多大な利益を出しながら、事故現場の右カーブ部分で列車の速度を制限する新型ATSが未設置だった安全対策の不備は、安全より利益優先の「誤った儲け主義」が見てとれる。
つまり、利益追求という民間企業の側面と、縦横の風通しが悪く個を歯車化する役所の側面との、双方の悪い部分が一気に噴出した形だ。
これらを「企業の風土」と会見で繰り返す幹部らには、開き直りすら感じ、怒りを通り越して、情けない限りだ。
国鉄が分割・民営化されて18年。JRはすっかり「民」の会社というイメージが定着していた。接客サービスが改善されたところから始まり、関連ビジネスも拡大。さまざまな旅行商品の展開、東日本で言うところのSuicaにあたるICOCAや駅ナカビジネスの拡充等華やかな部分がクローズアップされ、すっかりサービス業としてプロ化したように見えていた。民営化して良くなった例として引き合いに出されることもたびたびあった。
しかし、それは間違いだった。
マーケティングにおいて、マーケティング・ミックスの一つ「製品(サービスを含む)」のコンセプトは「製品の核」「製品の形態」「製品の付随機能」という三つのレベルでとらえられる。
「製品の核」とは、中核となる便益とサービスを意味し、購買者が本当に購買する本質だ。「製品の形態」とは、製品の特徴、スタイル、ブランド名、パッケージ、品質によって示される製品の形。「製品の付随機能」とは、アフター・サービス、保証、配達と信用供与、取付けなどの付随機能だ。
JRのサービスをこれらにあてはめると、同社サービスの「核」その中でも「根っこ」は、「乗客を安全に移動させること」に他ならず、駅が便利に使えたり、定期券で買い物ができたりするのは「付随機能」であるはずだ。利益優先でビジネスを拡充するなかで、生命線である核の部分を軽んじ、付随する派手な部分だけをキラキラに飾ってきた。しかし、肝心の細胞が汚れていてはどんなお化粧をしても、いつかは化けの皮がはがれてしまうということだ。
現在、郵政民営化、道路公団の民営化等が議論されていて、別段それには反対しない。しかし、単に税金の無駄遣いをなくすという視点だけでは、大きな落とし穴があるかもしれない。民営化とともに、組織の体質改善をあわせてやらないことには、今回のような取り返しのつかない事態が起こらないとも限らない。
今回の事故の背後にある本質的な問題は、何もJRだけではなく私たちも他人事としては片付けてはいけない。
マーケティングは、最先端の手法や大掛かりなビジネス等華やかなところにばかりスポットがあたりがちだが、根幹になければいけないのが「倫理」や「良心」だ。
自らのビジネスの求められる「根っこ」は何なのか。もう一度確認して、襟を正さないといけない。(鈴木一)

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】82号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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