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コラム

【マーケティングせつないとき】差別化の隙間もなくなってきたとき(2005.03.02)

拙者、決してコレクターではないが、結構文具が好きですから。
最近の筆記具売場を訪れたことがあるだろうか?ある程度大きな文具売場では、筆記具コーナーにはかなりのスペースが割かれており、それを埋め尽くすだけの膨大な種類の筆記具が陳列されている。いつも多くの客が集まり、あれこれと試し書きをしている。カラフルな商品がたくさん並んでいて売場の楽しさを演出している。
私自身、特に買いあさっているわけではないが、せいぜい150〜200円程度のものなので、立ち寄ると試しに新製品を買ってみる。
気づいてみると、一生かかかってもこんなに字を書かないであろうと思えるほどストックができてしまった。ただでさえも、キーボードのおかげで字を書くことが減っているのに。
安い筆記具を購入する際、「ゼブラの○×」、「パイロットの◇△」などメーカー指定で選ぶケースはほとんどない。「何となく書きやすい。」「なんかこれいいかも。」というレベルで選ぶ。それゆえ、まずは棚のいい位置に並んでいることが手にとる上での重要な条件になる。そして、その棚割を決めるのは小売側だから、メーカーは有利な場所を確保しようと、商品の差別化とその訴求を行なうことになる。軸、キャップのデザイン・仕様、インクの種類、ペン先の太さ等、とにかく構成要素をこれでもかと差別化する。その結果、筆記具においては、「書く」という基本機能以外のデザイン、インクがキラキラする、クリップがはさみやすい、デザインが格好いい等の付加要素で勝負が仕掛けられる。しかし、実際はそれらの差別化のメッセージは、私たち顧客には届いていない場合が多い。
文具に限らず、最近の商品は量も種類も飽和状態。
その中で、企業はマーケティングの基本であるセグメンテーションとターゲティングを推し進めてニッチ(隙間)市場を狙い、これでもかと製品差別化を繰り返す。その結果、製品の種類が爆発的に増えて競合が増える。それを繰り返すから、製品のライフサイクルは極端に短くなる。そして、こういうマーケティングゲームに参加できるのは、次々と開発する力をもっている大手企業だ。大手企業は「これがダメならこっち」と手札をたくさん持ち、すばしっこく新製品を供給していくことができるからだ。
「品番は増えるが、その供給者は限られる。」それが最近の市場の構図のようだ。
そんな「隙間市場ほじくり競争」を繰り返していては、セグメントした市場規模がどんどん小さくなり儲けにくくなる一方、必ずしもユーザーを豊かにしているとも言えず、双方疲弊してしまう。
このゲームは終わらせるには、どうも製品開発の発想を変えないといけないようだ。
マーケティングの大家コトラー氏が「マーケティング思考法」で指摘しているように、これまで排除していた視点も柔軟に取り入れる「水平思考(ラテラルシンキング)」で、別次元のユニークな商品を送り出していかねばならない。
その点、文具においては「Dr.グリップ」や「カドケシ」等が、一つ抜けた商品と言えるのであろうが、発想法を変えたからと言って容易にこのような製品を生み出せるわけではないことも事実で、しばらく悩みからは解放されなさそうだ。(鈴木一)

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】73号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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