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コラム

【マーケティングせつないとき】IT社会を築いた功労者が引退するとき (2005.02.23)

パソコン通信の代表格「NIFTY-Serve」のサービスが来年3月31日で終了する。1987年4月にスタートして以来、19年間の幕を閉じ、これでパソコン通信の大手商用サービスは姿を消すことになる。NIFTY-Serveの会員数は、95年には100万人を超えていたが、その後インターネットの普及で利用者が減少し、利用者数は約2万人に落ち込んでいた。
時代の流れなので仕方がないが、これについて懐かしさと寂しさを感じている人は多いのではないだろうか。
私自身、インターネットに興味をもったきっかけは、このNIFTY-Serveであった。
会社勤めだった当時、まだ社内では独自ドメインはおろか、電子メールを使っている人も少なかった。そんな中、社外の人とのコミュニケーションで必要ということを理由に、総務の女性に無理矢理お願いして名刺に入れてもらったのが@niftyserve.or.jpのアドレスだった。
当時の回線速度は、アナログ電話回線で2400bps。文字が一行ずつ順番に流れていくのを目で追っていた。データはテキストのみなので、大きなストレスは感じなかったが、それでも9600bpsになったとき、そのスピードに感動したのを覚えている。
いろんなフォーラムにも登録し、勉強会等仲間とのコミュニケーション用に専用のパティオもいくつか開設した。私の知人には、フォーラムのシスオペ(議長役)で結構な小遣いを稼いでいた者もいる。その代わり彼はNIFTY-Serveの通信費を毎月数万円払っていたが。
NIFTY-Serveは、多くの人に新たなコミュニケーション機会を提供し、IT社会の土台となる文化を育てたと思う。
電子メールは、発信と受信に時間的なズレがある「非同期双方向のコミュニケーション」をメジャーなものとした。また、顔文字、引用、レス、ネチケット等に象徴されるように、手紙でもない、話し言葉でもない「第三の言葉づかい」を生み出した。
そして、オンラインコミュニティというものが、一つの「社会」として位置づけられ、オンライン上でのリーダシップやコミュニケーション能力などが真剣に議論され研究された。また「ネットだから本音が言える」という仮説のもと、マーケティングでもユーザーの意見を聴く場、または口コミの武器として注目のテーマとなった。
時間が流れ、ブロードバンド化が進み飛び交う情報量は激増、画像・音声・動画等コンテンツの表現力は劇的に高まった。しかし一方、当時は届くとうれしかったメールも、今では一日300通を超え、その7割以上が迷惑メールという有り様。ウイルスや詐欺、個人情報の流出の恐怖は日常的なものになった。
進化を否定するつもりはないが、オンラインコミュニケーションそのものは、一人一人にとって豊かになったとは断言しづらい。ツールの発展に使い手がオーバーフローを起こし、単位情報量あたりの重みがうすれている。
そんな中、IT社会を築いた功労者であるNIFTY-Serveがなくなってしまうことは、「古きよき時代」を懐かしむ気持ちと同時に今後への不安も感じる。
しかしそう悲観することもないのかもしれない。最近流行りの「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」は、知り合いの紹介がないと参加できないいうオンラインコミュニティだ。無謀な「広がり」にうんざりしたユーザーが、自分の意識の及び範囲のコミュニティを選んでいるのであろう。
舞台や道具は変わっても、主役である人間の本質は大きく変わらない、NIFTY-Serveで培われた真面目なオンラインコミュニケーションの文化は、形を変えてきっと受け継がれていくはずだ。(鈴木一)

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】72号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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