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コラム

【マーケティングせつないとき】「愛の告白的パワー」が独り勝ちをもたらすとき (2005.01.26)

ソニーが、05年3月期連結決算の業績予想を下方修正すると発表した。主力の薄型テレビやDVDレコーダー等エレクトロニクス分野で、価格競争にさらされ業績を圧迫された他、携帯音楽プレーヤーでは、アップルのiPod人気に押されたことなどが業績低迷の理由として挙がっている。

その一方米アップルは、10〜12月期決算は、iPodの好調に支えられて売上高、利益とも過去最高を記録した。先日発売された超小型のiPodシャッフルは、予約殺到で発売後即完売の品切れ状態。3月には日本でも音楽配信サービスがスタートする予定で、iPod人気はさらにヒートアップしそうだ。
確かにiPodのマーケティングは巧みだ。バーニーズニューヨーク新宿店への展示、ファッション誌への露出強化、それに加え、ルイ・ヴィトンやプラダ、コーチなど有名ブランドが専用ケースを相次いで発売することで、ファッションアイテムとしての地位を確固たるものとした。

しかし、このiPod人気とソニーのブランド力もしくはデザイン力の低下とは、必ずしも同じ土俵で論じられる話ではないと考えている。
競合に関連なくiPodは売れることになっていたのだ。
というのも・・・。
実はあのリンゴマークの製品を使いたいとずっと思っていた潜在層はもともと多かった。
Macはとがった中にもキュートさがあり、誰が見てもチャーミングだ。著名人をはじめ、クリエイティブ系の人間がMacユーザーを公言する。時には「フリーズしてもそこが可愛い」などと奇怪なコメントを発し独自の世界をつくっているMacユーザーを、私たちは、ある種の羨望をもって見ていた。
しかし、Windowsという巨大な壁が、デファクトスタンダードとして立ちはだかり、特にビジネスユーザーを中心に「格好はいいけど不便」という代償を払う踏ん切りがつかず、Winの呪縛から逃れられないでいた。

しかし、今回のiPodは、Win/Macは無関係に使える。
とうとうMacデビューのチャンスが万人に訪れ、潜在的な渇望感が爆発したのである。「実は前からあなた(Apple)のことが好きだったんです。やっと振り向いてくれたんですね。」そんな愛の告白的パワーがiPod大ヒットの原動力であり、競合商品の出来、不出来というのはあまり問題ではないと思うのである。

そして、ここまで極端ではないが、似たような物語は、ケータイの世界できっと起こる。
価格や端末のデザインの点から、実はauやボーダフォンの方が格好いいと思っているドコモユーザーは多いはずだ。しかし、携帯番号が変わることには抵抗がある。
ところが2006年に番号ポータビリティ制度、つまり、キャリアを変えても番号を変えなくていい制度がスタートする。そうすると、多くのドコモユーザーは「実は好きだった」他社キャリアに流れていくであろう。

さまざまな事情で手が出しにくかった「愛するブランド」に「お近づきになれる機会」を得たとき、ユーザーは一気に動き、ヒットは約束される。
まさに文字通り「待望の」商品やサービスというわけだ。
KIHACHIの中華、とらやのカフェ、ソニーのPSPなども同様だろう。

しかし、いずれにしてもこの作戦、愛され続けているブランドにしか使えない。
そうなることが最も難しいのだ。軸足のぶれないブランディングを丁寧に蓄積していくこと、それ以外にウルトラCはなさそうだ。

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】68号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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