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コラム

【マーケティングせつないとき】「ユーザーニーズ発」を甘くみてしまうとき (2004.10.13)

物が溢れている現在、商品の差別化するためには、まずユーザーを意見を聞くのが一番。ごもっともな話。

インターネットが、企業と生活者の距離を劇的に縮めたことは今更言うまでもない。その特性を生かして、商品企画の段階からユーザーの意見を取り入れてものづくりを進める手法は、今となってはそれほど珍しいものではない。

この手の代表選手と言える「空想生活」は、アイディア発案者だけでなくデザイナーも参加して、今までにない家電製品等の商品を企画する。また、「たのみこむ」は、商品の企画をWebサイト上に掲示し、購入希望を募り、一定数以上になった段階でメーカー企業に生産を依頼するモデルだ。
またこの分野、生活コンシャスでコミュニケーションのリテラシーの高い女性向けが多い。化粧品や美容に関連の「アットコスメ」、「美・構図(Because)」、「カフェグローブ」などはそれぞれの方法でユーザー参加型の商品企画を行っている。

ユーザーが商品企画に参加することで、既存の商品への不満や新規のアイデアをきめ細かく得ることができ、かゆいところに手が届く商品を企画できると同時に、そのプロセス自体がプロモーション活動となる。また、もともと欲しいというユーザーの声から生まれているわけだから、発売後のリスクも軽減できる。さらには、ユーザーニーズの反映を武器に、販売チャネルに対しても交渉力をもつことができる。

何を隠そう私自身、ネットとリアルの場でユーザーの声を集め、それを形にする商品企画プロジェクトに関わっているのだが、いいことづくめに見えるこの話、実際には決してやさしいものではない。

まずユーザーといっても、ライフスタイルや関心度などプロフィールは千差万別で、どこまでセグメントしモニターを集めればよいのか悩みどころだ。あまり数を絞ると「声」としての信頼性を欠いてしまうが、逆だとぼやけてしまう。

また、当たり前だが、ユーザーはわがままだ。ユーザーの意見は広く、細部に渡る。そしてそれらには相反する意見が多い。これらに八方美人に対応しようとすると、誰のための商品かわからなくなってしまうばかりか、誰も欲しくない商品になってしまう。ユーザーニーズは、個別に聴けば当然十人十色(もしくは一人十色)であり、それをすべて叶えようとすると収拾がつかなくなる。

それから、価格設定を含むコスト・パフォーマンスの問題。ユーザーの声は突きつめると、「安くていい商品が欲しい」ということになる。しかし、それはビジネスベースで考えると採算があわないことが往々にしてある。
かと言って、値段を上げたり、機能を削ったりすると「ユーザーニーズを反映していない。」ということになる。

これらの難題を克服するの大前提として求められるのは、何のために商品を開発するのかというしっかりとしたプロジェクトの「軸足」だ。
そして、その上で、ユーザーの声の分析力、編集力(デザイン力)、さらに一連のプロセスのディレクション力が不可欠だ。

どの声を拾い、どの声を捨てるのか、また捨てる場合それはなぜかを明確にして、必要に応じて、できない理由、やらない理由をしっかりとユーザーに説明する。それがないと、ユーザーは単に無視されたと思い逆にそっぽを向かれてしまう。

価格については、決して安ければいいということはない。なぜそういう商品になったのか、ディテールにわたるまできっちりとした理由があり、価値を説明できれば納得を得られるはずだ。

それから、ネットで吸い上げた意見を、形にしていく上では、人数を絞ったリアルの議論を重ねることが不可欠だ。労力はかかるは避けては通れない。

結局、ユーザー参加型商品開発は、その理想的な概念ほどウルトラCではない。
しかしユーザーの声を聴く「耳」としてのインターネットの活用は、重要であることには間違いないし、できない理由を並べればキリがない。
一つ一つハードルをクリアして、本当に愛されるロングセラー商品を世に送り出すべく、現在奮闘中である。

*この記事は、週刊で発行するメルマガ【マーケとマネー〜せつないとき】54号に掲載したものです。ご興味のある方はこちらからご購読ください。
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